どうしていたらよかったんだろう。
どうしてこんな、“失敗”に終わってしまったんだろう。

「はぁ」と、もう何度目かわからない溜め息を吐き。解けてしまった靴の紐に視線を落とす。

今まで、苦手なものから避けてきたツケがまわってきた、とか? 上手く人付き合いが出来ない気がするって言って、最近では極力関わらないようにしてきたんだから、自業自得ってやつか……。

それでも。過去に、一度や二度。オレにだって恋人は居たわけで。
その過去を振り返ってみたけど、どれも同じような終わり方をしていたのを思い出す。

すれ違って、相手の求めてることが本当にわからなくて。どうしようもなくて、離れた。
“離れた”なんて言い方は、随分と聞こえがいい言葉で、本当は、“諦めた”が正しい。


諦めれば、そのときはつらくてしんどくても、結果的にはラクな道。
だけど、その後はどうなんだ。それから、数年経った、今の自分は――。


「成長してないな……」


立て膝をして、地面にだらしなく広がる紐を拾い上げる。それを蝶結びに、きゅ、と結ぶと、結び目にそっと触れた。

何度解けても、こうしてその度に輪を作れば。固い結び目が出来るんだよな。
匙を投げないで、何度も、何度も……。

……あれ? もしかして、同じなのか?
漫画(仕事)も、人付き合いも……。漫画なんて、反復練習みたいなものだ。とにかく、描いて描いて描いて――――ペンを持つ時間が長い人ほど、描きたい線が見えてくる。

それと同じ原理なら。
一度すれ違ったって、何度衝突したって。反復するように、また修正して、何度も何回も心を通わせればいいんじゃ……。

だって、漫画もそうだった。初めから、今の自分が持つスキルなんてなかった。
“苦手”だから、っていうだけじゃなくて、ただ単に、そういう時間を重ねてこなかっただけなんじゃ。


真夏の熱いアスファルトに近づくように蹲ったまま。25になって、こんな単純なことに気付かされるなんて。