なんて浅はかなんだろう。
きつく抱きしめ、キスをして。そうすることが、繋ぎとめておく手段だなんてどこかで思っていたから、こんなことをしてしまうんだ。


「――――ん……っ」


塞いだ口から漏れる美希の声は、いつもの甘い声とは少し違う。
息苦しさと、他に意識が行っているような焦燥感のような……。

満たされないまま唇を離すと、彼女は泣きそうな瞳にオレを映していた。


「――意外に熱いんだねぇ? 春野センセって」


水を差すようにしゃしゃり出てきたのは、外崎。
『邪魔するな』と言いたいところだが、ここはコイツの家。つい、今まで忘れていたけど。


「いいモン見させてもらった」


腕を組んで、廊下に繋がる扉を開けたまま、その枠に体を預けながらオレを見る。
その余裕の態度が、どうにも釈然としない。一体、外崎はなにを考えているんだ? それに、そもそも美希とはなにがあったっていうんだ。

仕事に関して外崎が同じような姿勢で居たって、痛くも痒くもないし、どこ吹く風って感じでいられるのに。


「外崎っ……なに考えてんだよ?!」
「お。また新たな一面出た」
「美希に近づいた理由はっ」


まるで『全部知ってます』っていうような態度が苛立ちを助長させる。……いや、“まるで”ではなくて、おそらく本当に全てを知ってる?

冷静さを欠いたままのオレは、外崎の胸ぐらを掴んで睨みをきかせる。