『夕方、懸賞用に色紙届けるからよろしくー。新人のコはどうだー? 少しは進んだか?』


――あれ……? 澤井さん、知らないのか……。まぁ、そうか。つい今しがたのことだもんな。でも、知れ渡るのも時間の問題――――。

澤井さんの声を聞き流しながら、相変わらず棒立ちのオレに、耳を疑う言葉が飛びこむ。


『ああ、それと。意外なとこで意外な人と会ったぞ。ユキの“彼女”』


オレの、“彼女”だって――?!


「澤井さんっ! それ、本当ですか!!」


ガチャリと挨拶もせず、突然反応したオレに、さすがの澤井さんも驚いたようですぐに返事が返ってこない。
けど、そんなことお構いなしで、オレは間髪いれずに問い続ける。


「彼女って、美希ですよね? 『意外な』ってどういうことですか?! 誰かと一緒っていう――」
『ま、待て待て! ユキ、なんだよ。居留守か?』
「早く教えてくれっ」
『わーかったって! そう急かすなよ』


こう見えて、オレは一度言い出したら聞かないタイプだと言うことも知る澤井さん。
そんな彼は、まるで子供をなだめるように前置きして、落ち着いた声色で言った。


『そう。向井美希ちゃん。会ったのは、リョウの家だ』
「リョ――――」


……どうしてだ? 外崎と美希がなんで……。