青いスニーカーに、細身のジーンズ。それに黒のトップスを纏ったわたしは、今日も同じカバンを肩に掛けて、暑い日差しの中を歩いていた。

こんなに暑いのに、背中の中ほどまでずっと伸ばしてる髪は、暗くても重くてもそのまま。
特段、手入れなんかしないで、ただひとつに纏めてる。


「美希(みき)!」


大学の敷地内に入ると同時に、名前を呼ばれたわたしは足を止めた。
振り向くと、木陰の中を小走りでやってくる、ひとりの女の子。


「おはよーっ。今日も暑いねーやんなる。早く中、入ろ!」


朝から明るい声で笑顔を振りまく彼女は、ここにきてから仲良くなった友人。
早川恵(はやかわめぐみ)という、その子は、わたしと違ってすごく可愛くて活発だ。

白い半そでのブラウスから覗く白い腕。細い首筋の両側に揺れる、ふわりとした茶色い髪。
マリンスカートが涼しげに揺れて、ラインの綺麗な足を魅せながら階段をあがる。


「あっつ……」
「階段だしねー。ていうか、美希はもう少し薄着したらいいよ。髪も思い切ってショートにしちゃえばいいのに! 絶対似合う!」
「メグはいつもわたしを買い被りすぎだよ」


メグの細い足首をみながら、後を追うように階段を昇りながら答えた。
ピタリと止まったメグの立つ場所まで追いつくと、わたしも止まって顔を上げた。