『――ホント、都合のいい女ね。だから、“代わり”にされるのよ』
「“代わり”……?」
『所詮、アキって人の代わりなのよ、あなたは!』
「……ア、キ――――」


聞き覚えのある名前。
『アキ』……アキさん、って……?


『おめでたい人ね。せいぜい契約期間だけ、恋人気分を味わってれば?』


一方的に捲し立てられ、プツッと通話が途切れてしまった。
ゆっくりと耳から携帯を離すと、外崎さんが察してぼそりと呟いた。


「こーわ……」


おそらく、会話の端端が漏れて聞こえていたんだろう。苦笑しながらわたしを見て、またゆっくりと近づいてくる。
つま先が触れるくらいに距離を詰め、わざとにっこりと笑みを浮かべて。


「体当たりしたけど、玉砕――ってとこかな。よかったね」


……「よかったね」と言われても、心は全く沈んだまま。
こうなってくると、もはやなにが原因で気落ちしているのか……いや、全部が原因、か。


「わかりやすいコだなぁ、ミキちゃんって」


俯いたままのわたしを覗きこんで、呆れたように笑って言う。それでも、その場から一歩も動けずに、ただ、足元だけを見つめていた。
すると、再び彼はわたしの顎を持ち上げて、無理矢理に視線を合わせた。


「だから一緒にいて、ラクなのかなぁ。『もういい』ってほど、気も遣いそうだし」
「……それって、どういう意味で言ってるんですか……」
「いや? 別に深い意味はない」