澤井さんの言ったことが、いつまでも頭からなくならない。
そんな“心ここに非ず”のわたしに気付いた外崎さんは、わざと話を振ってきた。


「まぁ、さ! 別にミキちゃんが直接的に邪魔だって言ってるわけじゃないんだろうし。そんなにへこむこともないんじゃない?」


でも、仕事に影響させてるのには変わらないのなら……直接的でも間接的にでも同じこと。
その証拠に、外崎さんの言葉のあとに、澤井さんからのフォローの言葉も皆無。

好きな人の負担とか、足を引っ張る行為とか。今はよくても、ずっとこの先このままだとしたら、絶対に耐えられない。
雪生はあんな感じで優しいから、きっとなにも言わないだろうけど。だからこそ――。
だからこそ、きっと、わたしはつらくなる。

なにも取り柄がなくて自信のないわたしは、すぐに隣にいることに息苦しくなりそう。


「ああ、リョウ。約束のものは?」
「ちゃんと仕上げてますよ。ハイ」
「……確かに! んじゃ、引き続き頑張って」


澤井さんは既に切り替えたように、本来の用件を外崎さんに伝える。すでに示し合わせていたようで、外崎さんは茶封筒を渡す。
それを受け取った澤井さんは、慌ただしく家をあとにしようとした。

部屋を出る直前、ぴたりと足を止め、わたしたちを振り返る。


「えーと、向井美希、さん?」
「は……はい」
「ユキをよろしくね?」
「え――――」