ちょっ……と! ち、近すぎるんですけど!!

体を支えられながら、触れるまでの距離、数センチ――。
外崎さんの垂れた前髪は、すでにわたしの顔に触れている。

ちくっとした軽い刺激が、わけもなく緊張感を増していく。

ま――さ、か。このまま、そんなことになっちゃうなんてこと、ないよ……ね?


揺らぐ瞳、止めた息。
その必死であろうわたしの顔に、笑いもせずに、ただ、じっと見つめ返す。

わたしから動いてしまえば、間違って重なりそうな唇に、無言の圧力を感じつつ。
ひたすらに黙って、懸命にこれ以上の隙を見せないように、と負けじと見つめ返すけど。


「――しちゃう? キス」


息が掛かるだけでビビってしまうのに、その言葉でもう大パニック。


「しっしませ――」


これはもう即答できる質問だ! と、口を開いたときに、目の前の彼の瞳が閉じかけた。


――――ま、ずい。


『ピンポーン』。

間一髪で止めに入った音。それを合図に、伏せていた目をぱちりと開いた外崎さん。
わたしは当然、『よかった』と涙目になりながら胸を撫で下ろす。

パッと腰に回されていた手も離されて。完全に、『逃れられた』と安堵の息を漏らす。

すると、無防備だったわたしに、悪魔の不意打ち。


「……!!」