「ま、ちょっとだけ、アイツの悔しがる顔を見たいんだよね」


頭に軽く手を組んで、くるりと回転した隙に、わたしはめいっぱい酸素を取り込む。
それをゆっくりと吐き出して、なんとか動転しないように落ち着かせた。

それも束の間。
またまた、くるっとわたしに向きなおした外崎さんが、ポケットに手を突っ込んで顔を覗きこんでくる。


「だけどね? 俺はこの程度にしとくけど、あのコ――――杏里ってコは違うだろうね」


――――そうだ。

自分だけで、いっぱいいっぱいになってる場合じゃない。

今頃、あの二人……杏里ちゃんは、なにをしてるんだろう?!
雪生は男だから襲われるとかってことはないと思うんだけど……。


「今は、オンナノコも襲う時代だしね」
「えぇっ!」


タイムリーな助言に、一気に思考は雪生と杏里ちゃんでいっぱいになる。


そうなの? 女の子が男の人を……? なんかイマイチ想像出来ないけど。でも。


少し前の状況を思い出す。


――確かに。雪生が応答もせずに、ただ仲良く仕事してるだなんて絶対にあり得ないし。
じゃあ、まさか、本当にそんなことが……?!