意味がわかんない。

思い返せば、初めからわからないことだらけだったのに。わたしときたら、あのマンションの入り口で動揺してたがために、余裕も冷静さも失って。


「わたしが、なんだっていうんですか……?」
「リサーチ――と言っても、澤井さんとあの、杏里ってコからだけの情報だったけどね。でも、杏里が『わかりやす過ぎ』っつーくらい、わかりやすかったんだろーね」
「なんのことか、全然わかん、」
「カノジョなんでしょ? 春野センセ、のさ」


「カノジョ」と聞くと、バカみたいだけど、照れが出る。
まるで中学生か! って突っ込みたくなるような自分の心境に、なんとか歯止めを掛けて、真顔を取り繕う。

そんなわたしの反応を、見透かすような瞳を向けて、ニヤリと笑った。


「アタリ」


パン! と、雑誌を閉じ、机に置くと、ゆっくりとこちらに近寄ってくる。
口元には、その妖しげな笑みをたたえたまま――。


「“だから”、ね? ちょっと、考えを変えてみたんだ。アイツを負かす方法を、さ」


後ずさりをするも、目の前に立ちはだかられたときには行き場を失っていて。
クローゼットに背を預けたまま、硬直したわたしは外崎さんをまともに見られやしない。


「“渡したいモノ”っつーか、“渡してほしいモノ”の方が正しかったかな」