エレベーターの中で首を傾げていると、7階に到着する。
インターホンを鳴らすと、ユキセンセの家のはずなのに、カズくんが我がもの顔で玄関を開けたからなんだか可笑しかった。


「おはよ。いやーびっくりした」
「あ、はは……カズくん起きててくれて助かりました」
「うん。これから寝るとこだったんだ」
「え? あ、そうなんだ……」


じゃあ朝ご飯とか必要なかったんだ。なんだ……。なんか、すごい出しゃばった感。

リビングへいくと、昨日となにも変わらない景色がそこにはあった。
変わってるところと言えば、机の上のお菓子の袋や、缶ジュース。それと、ユキセンセの場所に重なった何枚かの原稿用紙。


わ……。なんとなく、昨日見た原稿よりも、もっと“仕上がってる感”があるような……。
あんな数センチ四方の枠に、人をいっぱい描いたりとか、何気ないけどすごいよね。


「ヨシさんも今寝たとこ。おれもちょっと寝るけど、ミキちゃん、大丈夫?」


机の上からパッと視線をあげ、カズくんにコクコクッと頷くと、「もうすぐユキセンセ、起きると思うから」と、別室へいなくなっていった。


……静か。て、いっても、昨日もわりとずっと静かだったけど。
なんでわたし、ここにいるんだろう……。


がらんとしたリビングは、主がいないとより一層広く感じる。
わたしは机の前で立ち尽くしたまま、ぼんやりとやりかけの原稿を見てた。

そのとき。背後でガチャ……と音がして、パッと振り向いた。


「うわっ……」
「えっ」