席につくなり、外崎さんは店員さんに「アイスコーヒー」と注文をする。
なんとなく、わたしも同時に注文した方がいいのかと、同じものを頼み終えると、正面から穴があくほどの視線を感じた。


「……あ、あの?」
「ああ、いや。ゴメン。若いな―と思って。いくつだっけ?」
「19……もうすぐ20になりますけど」
「へー。そりゃ若い!」


黒い帽子を深く被ったまま、顔を少し俯かせて笑った。
その姿を見て、改めて知ったこと。
“漫画家さんて、イメージしていた人たちじゃない”ってこと。

こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど。

雪生と出逢う前までの、わたしの漠然としたイメージって……もっとこう、閉鎖的というか。色も白くて、ちょっと度のキツイメガネとかして? 服装とかも、無頓着な傾向にあって、世間的に“イケてない”部類の方々かと……。
って、自分のことを棚に上げて、そんなこと言ったら刺されるかな……。

でも、実際はそんなこと全然なくて。

杏里ちゃんはものすごいかわいいし。この、外崎って人も、雪生とはタイプが違うけど、気が強そうな感じで頼りがいのありそうな。切れ長の目が、そういう印象を助長してるのかな……。
ファッションも、モノトーン好きなのか、シックに決めてて良く似合う。

雪生も負けてないくらいスタイルいいと思うけどね。でも、家にいるときって、スウェットとかで、かなり気を抜いてるけど。


いつしか、思い出してるのは雪生のこと。
その事実に気付いて、ハッとしたのと同時に、外崎さんが頬づえをして口を開く。


「春野センセ、仕事してんの?」


わたしの頭の中を見られてしまったのかというタイミングで、雪生の名前が出たから驚いた。なるべく平静を装って、ぼそぼそと小声で返す。


「あー……はい。いつも、なにかやってるみたいですけど」
「ふーん。ま、春野センセは忙しいからねぇ」