“あの日”のうちに、次に杏里ちゃんが来るという日が確定した。
それは2日後の今日だ。

もうすぐ、仕事も佳境に入るのだろうから、間が近くても当然なんだろうと思った。

おとといと同じ時間帯に着くように、わたしは雪生のマンションへと向かう途中だった。いつものように、近くのスーパーで買い物をして――。


「あ! ミキさんっ」


買い物かごに、ミネラルウォーターを入れようとしたときに、後ろから名前を口にされて振り向いた。


「こんにちはー」


そこにいたのは、杏里ちゃん。
前回同様、メイクをばっちりして、髪を巻いて。ショートパンツに生足で、薄い素材のタンクトップは、確かに涼しそうだけど、ちょっと露出が……と、わたしなら、自分でNGを出すものだ。

でも、杏里ちゃんだから、そんなファッションでも、ただ可愛く着こなしてるように見える。


「あ……こんにちは。早いですね……」


確か、約束の時間も前回と同じだったはずなのに。それよりもだいぶ早くにここにいるっていうのは、ある種の“気合い”なんだろうか。

驚き戸惑うわたしの返しに、全然気にすることもなく、笑顔で杏里ちゃんは言う。


「はい! なんか、早くユキ先生に会いたくて。そう思ったら、早く来ちゃいました」


さらりと、宣戦布告のようなものを口にされても、どう対処していいのか見当もつかない。
ただただ、言葉に困っていつまでもミネラルウォーターをカゴに入れられずにいると、「くす」っと彼女が口元に手を添えて笑った。