急に流暢に話しながら、雪生は広がってる原稿用紙をトントンと揃える。
そういう姿を見ると、『ああ、仕事してるんだなぁ』なんて改めて実感したりして。
そして雪生も、仕事モードに切り替わったせいか、話が止まらず次々と話す。


「まぁ、仕事部屋にもPCはあるし、カズたちがリビングにいながらデータの共有は出来るんだけど。やっぱり細かい指示とか確認とかするのに、同じ空間にいた方が――――」


立ちながら、中腰でパソコンをなにやらカンタンに弄っていた手がピタッと止まる。それと同時に言葉も途切れた。


「……あ、ごめん……また暴走してたね、オレ」


落ち込んだように言う雪生が、なんだか辛そうに見えて……。
自分の好きなことや興味のあることって、その話題になるだけでテンションが上がって、楽しくなるのは当たり前だと思う。

だからきっと、今のはまさにそれで。

でも、相手によっては、ついて行けずに苦痛な時間になってしまうってこともあるとは思う。
雪生は、今までにそんな空気を感じたことがあるんだろう。

自分は盛り上がっちゃって、気付けば相手が冷めていた、なんてことが。


「わたしはわからない話ですけど……」
「あ、だよね。ごめん、ホント」


だけど、わたしは。
楽しそうに話をする雪生を見たいと思うし、少しでも共感できたなら、自分もうれしいと感じるし。

素直に、この雪生の仕事に興味が湧いたし、全然苦痛なんかじゃない。


「でも、『知りたいな』とは思いますけど」


相手が雪生だからっていうのは、正直あると思う。
好きな人の仕事って、やっぱり興味湧くし。でも、それだけじゃなくて、雪生の仕事の姿を見てたら難しいこと取っ払って、引き寄せられるように魅入ってしまった。

それは好きとかそういう気持ちになる前から、あった事実。