『え? 週明け……ですか?』
『うん。あんまり切羽詰まったときって、余裕ないだろうし……。だからスケジュールに余裕のあるときに――と思って。知らないコとふたりって抵抗あったけど、美希が来てくれるなら大丈夫かな、って』


あの夜。食事の後、メールを確認した雪生との会話だ。
あの日の留守電の内容に関連した事情らしくて、新人の漫画家さんを見学させる約束をしてしまったらしく。

カズくんたちがいるときの方が、気持ち的にはラクだけど、スケジュール面では厳しくて。でも、スケジュールに余裕のあるときにはカズくんたちはいないわけで……と、頭を悩ませていたっぽい。

それで結局、わたしが同席することで話は落ち着いたみたいなんだけど。


……わたしだって、初対面の人と接するの得意じゃないんだけど……大丈夫なのかなぁ?


一抹の不安を抱えた月曜日。
わたしは雪生のマンションの前に立っていた。


『ああ。でも、なんでかな。美希は初対面のときから、そんなに抵抗を感じた記憶がない。もしかしたら、本能で感じ取ってたのかも――――特別だ、って』


歯の浮くようなセリフを言われたことも同時に回想してしまって、ひとり頬を赤く染めると手で覆った。
キィ、と中から住人が出て来てハッとする。慌てて取り繕うように軽くお辞儀をして、そそくさとマンションの中へと滑り込むように入った。


ピンポン、と呼出音が響いて、スピーカーから『はい』と雪生の声が聞こえる。


「あ……わたしです。美希です」
『……うん。待ってた』


さりげない言葉かもしれないけど、そういうひとことがわたしの中では大きな出来事。

っていうか、ココ、共同スペースだから誰かいてもおかしくないのに……! もし今の聞かれてたらすごい恥ずかしいよ!

今度は頬だけじゃなく、耳まで赤くなってるかもしれない。