「あ、あれっ?!」


なに、泣いてるの、わたし?

自分でも予想外の涙に、慌ててしまう。

なんだろう。今日は涙腺が弱い日かも……。


「――ゴメン。オレ、またなんかヘンなこと……」
「ちっ、違います!」


それは多大な誤解だ、と、左手で涙の筋を拭って、頭を横に振った。


「逆ですから……! そんなふうに言ってもらったことなんて――――」


きゅ、と触れられていただけの手に力が込められたのがわかった。
それを合図に、下を向いていた視線を上げる。


「“初めて”?」
「え……? あ、はい……」
「…………そっか」


……あれ? なんか、うれしそう……?

雪生のちょっとした変化に気付いて、気恥かしい雰囲気になりそうだったときに、デスクの方から音がした。


「あ、で、電話? どうぞ」
「……いや。メールかな。食べ終わってから見る」
「え? あ、でも、仕事の用件とかじゃ」


パッとさりげなく手を離され、改めてご飯を口に運びだす。
仕事の流れがわからないから、急ぎの件とか大事な話かも、と気になってしまう。

そんなわたしの顔を見て、ニコッと笑って言う。


「冷めちゃうし。食事のときはオフモード」


「なんてね」と付け足す雪生を見て、またひとつ“好き”が増えた気がした。