いつのまにか日も暮れて、夕ご飯の支度をそろそろ……という頃になっても、3人は変わらずの姿勢で仕事をしていた。


たまに聞こえる話し声も、ユキセンセの声は聞こえてなかったから、きっとカズくんとヨシさんだけで話してるんだ。

二人が私語をしていても、ユキセンセはそれを咎める様子も見せないし、苛立った様子も見られない。

と、いうことは、これが日常で、普通なのか。
そういえば、カズくんもここに来る直前に言ってた。

『ちょっと異様な雰囲気に感じるかもだけど、気にしないでね』。

うん、確かに。
先生で、一番偉いポジションであるはずの人が、会話に全く入らずに蚊帳の外にさえ見えてくるこの光景。

寝ているかのようで寝てない、手だけを動かす人形のような先生。

世の中の漫画家さんって、こんな感じなのかな……。


まるで知らない世界に飛び込んでしまったと改めて実感しながら、わたしは次の仕事のために、肩をトントンと指でつつく。
もちろん、カズくんの。


「ん?」
「あ、仕事中すみません、あの……いつも夜ご飯とかはどんなふうに……」
「え。あーホントだ。もうこんな時間! 言われたら腹減りましたよね?」


前傾姿勢をストレッチするように伸びをしながら、カズくんはヨシさんに同意を求める。


「確かに! 動いてなくても脳を動かしてるからか腹は減るよな。ははっ」


ヨシさんはどうやら明るい気さくな性格をしてるっぽい。

よかった。慣れたら少し、ヨシさんとは話せそう。

ホッとして、間に入るように経っていると、二人は話を続ける。