「『それじゃダメだ』って、思ってるのに、どうしても止まんなくて……その、ミキちゃんのことが気になっちゃってたから……」
「それって……わたし“だけ”ってこと、ですよね……?」


留守電の話とか、ユキセンセの交友関係自体、全然わからないわたしは、当然不安だらけで。だから、どうしても確認したくなった。

そしたら抱きしめるのを止めて距離を保つと、きょとん、とした顔で普通にセンセは答える。


「……え? ミキちゃん以外なんていないけど」


『その質問なに?』みたいな、軽く首を傾げるくらいに、不思議そうに言うセンセを見てたら、なんだか自分がバカみたいに思えてくる。
彼は、嘘とかつくような人じゃないと思うし、からかったりもしたりしないとも思う。

踏み出す前から疑って、可能性を自分で低くしていくよりも、捨て身で飛び込んだ方がいい。どうせなら、今まで経験したことないことをするべきだ。
どっちみち、わたしの気持ちは固まってるんだから。


「……そう、ですか……」
「うん?」
「いえ……なんか、すみません」


ペコっと軽く頭を下げて、そろりと視線だけをユキセンセに向けた。
一瞬、いわゆる天使の微笑みっていうようなやつを確認したと思えば、また、すっぽりと抱きとめられる。


「もーちょっと、こうさせて……?」


直立姿勢のまま、わたしからユキセンセの背中に手なんか回せずに。きゅっと抱きしめられる力を感じるたびに、心まできゅうっと締めつけられて。

消え入るような声で「はい」と答えるのがやっとだった。