「うれしくて……ヤバイ……」


両手を握りしめ、俯いたセンセは、確かに言った――――「うれしい」、と。
顔を上げたセンセは、いつもの無邪気な笑顔でわたしの腕を掴んで引き寄せ、言った。


「――――オレも」


…………え、ええ? どういうこと?
じゃあどうして、あんなに何度もわたしに謝ってたの……?


疑問の目を向けたけど、ユキセンセがそれに気付くはずもなく。
ガバッとわたしは覆いかぶされるように、センセの胸の中におさまった。ぎゅう、と抱きしめられる心地いい力に、『どうでもいいや』と流されかけたときだった。


「……嫌われたかと思った」


弱々しい声が、本心からの言葉だということを感じさせた。

まさか、ずっとわたしが嫌がってたと思ってた? うそでしょ?
もし嫌がってたら、何度もキスなんて受け入れないでしょう!


呆気に取られていたわたしを見て、目線を泳がせながら、ユキセンセがぽつりぽつりと言葉を繋げていく。


「冷静になればわかってるつもりなんだけど……でも、目の前にしたら、感情が優先されちゃうみたいで……オレ」


まるで叱られてるコドモのように、ぶつぶつと。
あれだけ真っ直ぐにわたしを見る彼が、目を合わさずにいるあたり、相当バツが悪いようだ。