ぽろりと零れた涙が頬を流れていくのを感じた。
それを拭うなんて頭もなくて、落ち行くままに、もう一粒の雫をこぼす。


「もう、好きになっちゃったんです……ユキセンセのこと」


――――ああ。思い起こせば、これが人生初の、告白だ。
今まで、片想いこそしても、自分からその想いを伝えようだなんて、思い切ったことをしたことない。
そんなこと、怖くて恥ずかしくて、考えられなかった。

それが、今。無計画に、無鉄砲に、告白してる自分。
しかもその相手が、全然手ごたえのなさそうだった相手。

知り合って間もないし、ちょっと変わったタイプみたいだし。
でも、だから、だ。

そういう人だから、わたしはわたしのペースが乱されて、こんなふうに思いもよらない告白をしてしまっているんだ。
きっと、彼じゃなければ、わたしはあのままずっと、告白なんてしないまま過ごしていたに違いない。


ドクドクと緊張しているけど、頭の隅では冷静にそんな分析が出来てたことにも驚く。
生まれて初めての告白だから、伝えたあとにどんな顔をして、どこを見て、なにをすべきかさっぱりだ。

動けずに。ただ、瞳から、溜まった涙が時折頬を伝っていく。
すると、センセの手が、わたしの涙袋をなぞるように、雫を掬った。

触れた瞬間に、ぴくりと肩を上げてしまう。


「オレが……『好き』? ほんと?」


顔を覗きこまれて改めて聞かれてしまうと、顔が熱くなっていき、言葉に出せない。
わたしは口を結んだまま、こくり、と一度頷いて見せた。


「――――マジで……」


それでもなお、同じような質問を繰り返されたわたしは、さっきよりも小さく、コクッと頷く。

もう、どうにでもして。一度肯定してしまった想いをごまかしたり隠したり出来るほど、わたしは器用に出来てないもん。

すると、拍子抜けの展開に、今度はわたしが目を丸くする。