ああ、なんてみっともない姿を晒してるんだろう、わたし。


握ってる拳に額をつけて、感情がこれ以上暴走しないようにと言い聞かせる。
目を閉じると、より、ユキセンセの鼓動と熱が感じ取れる。

わたしは、心も体も、進むことも戻ることも出来ずに、そのままでいた。


「……そんなふうに、思わせてゴメン」


ユキセンセは、顔をわたしの肩に置いたまま、静かに話す。


「まだ知り合って日も浅いのに……ゴメン」


声とその振動がダイレクトに伝わって、勝手に心が震えだす。


「一方的に押し付けて――ゴメン」
「――――だからっ……」


わたしは思わず口を開いてしまった。

だって、そんな言葉を聞いたって、どうしようもないじゃない! 「ゴメン」って何度言われたって、わたしの気持ちがなくなるわけじゃない。ただ、居心地が悪くなっていくだけだ。


思い切ってわたしはセンセの手を下ろして、くるっと向き合った。
目を大きくした彼と、初めて真正面から向き合って、心から叫ぶ。


「そんな言葉を重ねられても、困るんですっ……! いまさらっ……いまさら、なかったことになんか、わたしには出来ないっ」


――――ユキセンセのせい。
気持ちもはっきりしてないのに、わたしのテリトリーに入って来て。センセの気持ちもわからないまま、わたしに触れて。
順序がめちゃくちゃで、翻弄されるわたしは、余裕も決意もする時間が与えられずに。

そうだ。全部、センセのせい――。


「わたしは単純な人間だから……」


本当は、全部が彼のせいなんかじゃないってわかってる。
ただ、そうして彼(ひと)のせいにしたくなるほど、わたしは簡単に踊らされてた気がして。

でも、この気持ちは、誰でもない――自分が生み出したものだ。