思わず自分の手を止めて、ユキセンセを見てしまった。
パッと見、もしかして寝てるんじゃ……って思ったりもした。メガネと髪の毛で目が開いてるのかよくわかんなかったし。

体や頭はそのまま動かないで、よくよくみると、手だけが微妙に動いてるっていう不思議な光景。


……手、以外動いてない。


あんな状態の人に話し掛けるなんて、わたしには無理。邪魔者扱いされそうだし。


そんなことを考えていると、動かなかったセンセの頭がくるり、とこちら側に回った。
手を休め、凝視していたことに気付かれた! と、慌ててワイパーを握ってフローリングに視線を落とす。


「コレ。オッケー。ペン入れちゃってください」
「あ、了解です」
「あと、ついでにこのあたりに影つけといてもらえますか?」
「はい。この辺ですね?」


あ、ああ。なんだ。振り向いたのは、ヨシさんに指示するためか……びっくりした。

ぼそぼそとした話し声は、さっきの「コーヒー」みたいにドキッとはしなかった。


掃除をしてると間取りがわかる。
洋室が3つ和室が1つ。広いリビングに対面キッチンという4LDKだ。

3つも部屋があるのに、なぜリビングが主な活動場所なのか。

明確な理由は素人のわたしになんかわかるはずもない。
けど、もしかしたら、洋室に3人の男の人っていうのは狭い、とかなのかもしれない。