3度目の、キス。
それは、今までのとはちょっと違う。

初めはそっと、確かめるような、慎重なキス。それから、わたしたちの間に隙間が出来ると、ゆっくり瞼を上げて行き、目を合わせた。
それが合図かのように、肩に置かれていた大きな手が、わたしの後頭部に回される。
もう一方の手は、するすると下にさがって、軽くわたしの手首を掴んでた。

角度を変えての次のキスは、今までで一番力強い。
容易く顔を上向きにされたわたしは、その深い口づけに、頭の中が甘く痺れる。

あれだけ硬直させられてたはずの、わたしの身体は、今や立ってられないほど。
それは唇も同じことで、緩んだ隙間から、彼がするりと入り込む。

されてることは、強引なのに。
それでも、気持ちいいって感じる、コレはなに……?

全然終わらない、『癒やし』の行為に、呼吸が乱れていよいよ力が抜けていく。
ガクッと膝が折れ、床に尻もちをついてしまいそうなわたしを、間一髪のところでセンセが支えてくれた。


「ごめん。大丈夫?」


濃厚なキスの余韻と、腰に回されてる手が気になって、上手く喋れない。
ただ懸命に、俯きながらコクコクと頭を立てに振るけれど、正直全然『大丈夫』なんかじゃない。


だって……こんなの、全然知らない。
キスは初めてじゃない。けど、こんなに力が抜けるような、ぞくぞくとするキスはしたことない。

熱いのに、ブルッと身震いしてしまいそうな、ヘンな感覚。
腰が砕けてしまったのだって、産まれて初めて。
立つことも、まともに声を出すことも出来なくなるなんて、恥ずかしい。


真っ赤なはずの顔を隠すように俯いたまま、どうにかこの心臓を収まらせようと目を閉じる。
すると、突然、ふわりと体が宙に浮いた。


「……!!」


驚きすらも声に出せないわたしは、もちろん抵抗も出来ずに。
細く見えてたユキセンセの腕が、軽々とわたしを持ち上げる。