「でも、もうちょい上手くやれれば、もうちょい楽しい高校生活だったんだろーけどね」
「ははっ」と笑うセンセは、もういつもの笑顔だった。
その彼に、ホッとしたけど、心の隅の方はまだ締めつけられたまま。
状況とか、理由とか、原因とか。それは全く違うけど。
でも、『もうちょい上手くやれば』っていうのが、すごくわかる気がして。
わたしも、『もうちょい』自信持ててたら、『もうちょい』人生楽しめてる気がする。
「なんて、反省しておきながら、『行きたくない』とか言ってんの、オレ」
ギッと手をついて、勢いよく立ちあがったセンセは、歪な笑顔を浮かべてた。
『上手く出来ない』と言うけれど、不器用ながらも『他人に気を遣う』ひとだと思った。
「はぁー。じゃ、シャワー行ってくるか」
「あ、はい……じゃあ、わたしは」
今日のわたしの役目は“起こすこと”。
それはもう果たしたし、締切前でもないから、あまり長居しても困らせるだけだろうし。
そう考えたわたしは、合鍵をユキセンセに差し出しながら、帰ろうとした。
「行っちゃうの?」
不意に掴まれた手首。その拍子に合鍵が床へと転がるも、そんなのを全く気にせずにセンセは言う。
「充電、させてよ」
懇願するような瞳と、熱い手。
そんなふうに言われてしまったら、わたしなんて断ることが出来るわけない。
『なんで』『どうして』。
そんな疑問詞が浮かばないわけじゃない。でも、それ以上に、心が『うれしい』と感じてしまうから――。



