王様の言葉に、あたしはさらに自分の記憶を引っ張り出す。


うーんと・・・確か・・・。


マスコール王国は、戦争に負けそうになって追い詰められて。


禁断の呪法に手を出した。


悪霊と契約して、魔物の力を使って勝とうとしたんだと。


それをうちの王様が打ち負かして、悪霊を封じ込めましたとさ。

めでたしめでたし。


・・・らしい。


いや、あくまで噂ばなしだから。噂。


こういった王族関係の噂って、尾ひれがビラッビラとつきまくるもんだからね。


ほら、王様の偉大性を誇張しようとしてさ。


だから禁断の呪法だの、悪霊退治だの。


そんなおとぎ話みたいなことが現実に起こったわけがない。


そこまでいったら偉人伝通り過ぎて、爆笑ネタよ。まるっきり。


その宝石が、いくら探しても見つけられなかったんでしょ?


それじゃカッコがつかないってんで、そういう嘘物語にしたわけだ。


王家も大変ね。専門の脚本家でも雇ってるのかな?


嘘ひとつつくのも、ドラマチックに練り上げなきゃならないなんて。気苦労だわ。


「よって婚儀には、別の宝石を使用するものとしよう。それで良いな? アザレア姫よ」

「いえ、嫌です」


・・・・・・・・・・・・。


あ、あれ? 空耳、かな? 


なんか今、姫の口からドきっぱりと拒否の言葉が・・・


「ぜっったいに、嫌です。わたくしは竜神王の目以外の宝石など、身に着けたくはございません」