こんなことなら昨日接近した時に無理やりにでもお面をはぎ取っておくべきだった。そう後悔したけれどもう遅い。

「でも私、柚木くんが顔見せてくれるまで毎日来るよ」

「あまり拙者に関わってくれるな」

「だって昨日のお礼、ちゃんと言えてないし」

ガサッと中庭の木が揺れた気がして、揺れた辺りから声が降ってくる。

「……礼は無用だ。やはり敵など助けるものではないな」


柚木くんの容姿についてみんなの証言を集めてみたけれど、わかったのは、取り立ててかっこいいわけでもブサイクでもないということだけ。
夢が壊れたようなそもそも夢なんて抱いていないような、微妙な気持ちになってしまう。

「ねぇ、もうすぐ授業だよ。まだ出てきてくれないの?」

授業に遅れそうになったら、姿を現してくれるかもしれない。
そう思って私は、昨日と同じ昼休みの時間帯を選んで柚木くんに会いに来ていた。

今のところ、顔どころか指一本見ることは出来ていない。


「貴様が教室に戻るのが先だ。始業時間の隙を突くなど姑息な手には乗らぬ」

「う゛」

やっぱり私の手の内はばれていた。余計心証が悪くなってしまったかもしれない。