メイドや他の使用人の証言からも、ゼイルは自分を裏切る行為はしていないということははっきりしていた。

しかし、仕事の上でいい加減な仕事の仕方をするはずがないのに、ゼイルが会社に慌てて出かけなければならないことってどういうことなのだろう?と疑問に思いながら、クレアは大学へと出かけた。


そして、帰りに父のお墓参りをした。

父の遺した会社で何かが起きていて、それでゼイルが慌てて出て行った。

だからクレアは少しグチまじりに文句を言った。


すると、クレアのすぐ後ろで何か物を落とした音がして、クレアはびっくりして後ろを振り返った。


そこには中年の女性が花を携え水の入ったバケツを落として水をまいてしまっていた。



「あの・・・今の話・・・本当ですか?」


「えっ、どなたですか?」



「あ、すみません、私はエリーゼ・フィアナ・コスガリンドといいます。
じつは、あなたのお父様のクアントとお食事にいったり、メールでやりとりしたりしていました。」



「お父様の彼女さん?」


「いえ、そこまではとても・・・あなたのようなすばらしいお嬢さんがおられる方にずうずうしいことはいえませんでしたし、クアントもご自分の体のことをご存じだったのでしょう。

お食事以上のお誘いはありませんでした。
でも、私の弟の経営する会社は守ってくれるって話をしてくれました。

そして、クアントが亡くなったからもゼイルさんが話を引き継いでくれて、うまくいったと思っていたんです。

ところが、弟にきいてみると、ゼイルさんとは別の人の会社に買収されたということでした。


理由は買収されたあとの社員の待遇がとてもいいって言ってたんですけど、ふたをあけてみれば・・・社員はどんどん追い出され、弟には何も残ってないばかりか、もっと重い負債が乗っかっていたという悪い事実があったんです。」



「まぁ・・・それで自殺を・・・?」


「ええ、お恥ずかしい話なんですが・・・もっと私を信じてくれていれば、そんないい条件なものには裏があるって考えてくれたんでしょうが、弟にも考えがあったのでしょう。

クアントではなく、ゼイルさんが後を引き継いでいたということも抵抗があったのかもしれません。

その結果、弟の家はめちゃくちゃになりました・・・でも、そんなことはあなたのご家庭には何の関係もないこと。

なのに・・・弟の義妹はなんてことを・・・。
なんて謝ったらいいのか・・・。」



「ちょっと待ってください。私は父の会社のことはほとんど知らないんです。
買収のことも、ぜんぜん今朝まで知らなかったんです。

よかったら、お話を最初からきかせていただけませんか?」