家庭には、それぞれ独特の匂いというものがある。 そう。 正に匂いが違うのだ。 ――――いや、実際問題、僕に匂いなんてものは感じられない。 だから、この感覚は、例えばあったはずの柱の傷がない、床が妙に色あせている、つまりそんな違和感なのだ。 家の造りも装飾も何も変わっていない。 ……なのに、やっぱり、何かが違う。