「そう!チョコ!

彼女さんと布留くんはラブラブじゃない?だから貰うのかなーって」


「…貰わない、と思う」


さすがの俺もバレンタインくらいは知っている。


けど、バレンタインは――


「千晶は料理がダメでさ、全く作らないんだよね。

あと、そんな行事知らないと思うし」


「知らない、の?」


千晶の世界には俺のみ。


だから、外部からの情報にはすっごく疎い。


「……じゃ、じゃあ!」


ガンッ、と机を叩く。



「私、チョコの作り方――彼女さんに教えにいってあげるよ!」



「…は?」

キーンコーンと鐘がなる。


吸い込まれるように周りが動き、彼女もそれを目で確認。


「じ、じゃあね?」


自席に戻っていく彼女をよそに、俺の頭は混乱状態。


千晶に教えにいって?


なんでだ?


――友好関係を築くため、か。


「っ」


ダメだ。

そんなの、千晶にできるわけ……