月隠れの庭

「流星」

「……」

「おーい、流星」

「……」

「こら、バカ息子!!」


「……えっ!?」


大きな声に、上の空だった流星は自分が呼ばれているのだと気がついた。


「落ち着かないのは分かるが、家の中を熊みたいにウロウロするのは止めてくれないか」


いつも忙しくしている正成が、今日はなぜか珍しく家にいる。

彼はのんびり麦茶なぞ飲みながら、そわそわしている息子を見上げて注意した。


「心配なんだ、落ち着けってほうが無理だろ」



対して流星は、どこまでも呑気な父親に苛立った声を上げる。

「なぁに、そんなに心配しなくても尚人くんは無事に帰ってくるよ」

「…………どうしてそんな事が分かるんだよ」



「坊主の勘」



正成は右手の人差し指で、自分のこめかみを指す。


「…聞いたオレが阿呆だった…」


流星は大きくタメ息をつくと、がっくり頭(こうべ)を垂れた。