月隠れの庭

翌日。


(こんな場所、だったかな…)


尚人は鬱蒼と茂る木々の中に、ひっそりと建っている蔵を見上げ思った。

子供の頃の記憶では、大きくて立派な構えの建物だと思っていたのだが、今こうして見てみると自分の中の記憶は随分誇張されていたのだと実感する。

鬼が閉じ込められていた場所なのだから、そう簡単に壊せるものではない…後から後から色んな推測を付け足していった気がしないでもなかった。

本当に人間の記憶とは、曖昧で自分の都合がいいように出来ているものだ。

白かったであろう壁は雨と土の跳ね返りで汚れ、わずかな日当たりのある方には蔦が下から上へと勢いをつけるように這っている。


尚人は扉の正面に立った。


(もうここまで来たら、後戻りは出来ない…)


怖い気持ちと好奇心が複雑に入り混じり、小さく唾を飲む。