月隠れの庭

だが、それだけだった。


《名を教えたのだぞ、これまで悪行を重ねてきた我を消し去らぬのか》


「なぜだ。言っただろう?私はお前を輪廻に戻してやる、と」

自ら名を口にする者に、それ以上の罰を与える必要はない。

他者に魂を委ねたも同然なのだから。

「この世に異形の存在となってまで、何かを求め生き続ける者を容易く消滅させるほど私は《鬼》ではない。心配せずともお前との約束は必ず果たす…」


《やはりお前は面白いな》


そう小さな声で呟いた人鬼は彼の言葉に従い、素直に自ら蔵の中へと入って行く。


暗く湿った空間が、彼を包んだ…。


ガラガラ、ガシャン。


正恵は重い扉を閉めて錠をかけると、入口に封印の札を貼った…。