月隠れの庭

心が揺らいでいるのだろう長い沈黙に、彼はじっと付き合う。

その姿は人間そのもののようだった。

否、理性があるこの人鬼は、完全な鬼になりきれていないのかもしれない。

鬼にも人にもなれぬ存在…それこそが人鬼の埋まらぬ心の隙間なのかもしれなかった。


《だが、我も生きる為には腹が減る。人を喰わねば、姿を保てぬ》


「案ずるな。月の隠れるこの場所では、お前は腹を減らす事も消滅する事もない。眠るといい…時が来れば目を覚ます。その者が近づけば、お前の声は必ず届く」


《嘘ではなかろうな》


「私とて仏に仕える身。陥れるような真似は、決してしない」


《いいだろう…》


鬼は完全に納得した訳ではないものの、彼の言葉にゆっくりと頷いた。