月隠れの庭

「…………何か用?」


不自然なまでの沈黙に耐えれず、尚人が尋ねると、


「別に」


ぶっきらぼうな返事が返ってくる。

ふぅ…彼は白い煙を外に向かって吐いた。


(ただの嫌がらせ…?)


さすがの尚人も彼の態度に少々ムッとして、残っていた缶ビールを一気に飲み干すと立ち上がる。

「用がないなら僕は部屋に戻って、先に休ませてもらうね。おやすみ」

空き缶を持って台所へ向かおうとしたその時、


「尚人」


流星に声を掛けられた。

「何?」


振り返ると、相変わらず視線を合わせないまま、何か手に持っているものをヒラヒラとさせているのが目に入る。


「人鬼の事、知らなくていいのか」


「………あっ!!」


言われて、彼の手にしているものが何であるかを思い出す。


「それって、もしかして正恵さんの手記…?」

「そう。お前何にも聞いてこない所を見ると、これの存在忘れてただろ」

「……」

尚人はコクンと頷いた。