月隠れの庭

       ☆

ケガの事をあれこれ詮索されるのが面倒だと、周子が目を覚ます前に流星の家に帰って来た尚人は、風呂上がりに縁側で1人缶ビールを飲んでいた。


チリン…チリン…。


そよと吹く風が、軒下に吊り下げられた風鈴を揺らして涼しげな音色を奏でていく。


(静かだな…)


久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしている気がした。

指輪がなくても、何も気配を感じない…流星が心配するほど、この地に危険な霊がいるとは思えない平和な夜だ。


(人鬼の事さえなければ、楽しく過ごせるのに)


尚人はそっとタメ息をこぼした。

実は周子の家から帰ってきて1度も流星と口をきいていないのである。

ケンカをしたつもりはないのだが、話しづらい雰囲気が2人の間に漂っていて何となくお互い避けている状態だった。


チリン…チリン…。


風鈴の音色に耳を澄ましじっと濃い闇を見つめていると、隣に流星が座り黙って煙草を吸い始めた。



「……………………」



尚人は横目でチラリと彼を見る。

幼なじみはその視線に気づいているのかいないのか、真っ直ぐ前を向いたまま煙をくゆらせていた。