月隠れの庭

「それが例の人鬼の資料を探し直してたら、棚の奥から出てきたんだよ。曾祖父の手記が」


「えっ、本当に!?」


尚人は驚いて流星の肩を両手で掴むと、体を揺さぶった。


「で、それには何て!?」

「馬鹿、動くなって!!」

傷口の上にガーゼを貼ろうとしていた流星は、慌てて大きな声を出す。

「じっとしてろよ」

「ご、ごめん」

素直に謝ると、尚人は大人しくなった。


「よし、もう動いてもいいぞ………でも傷口が化膿しないとも分からないから、明日にでもキチンと病院でみてもらった方がいいかもな」


素人の手当てでは不安がある。

「傷が残るの嫌だろ?」

「…ううん、病院には行かない。これで十分だよ。ありがとう」

尚人は微笑むと、強制的に話を終わらせた。


(右目の事、気にしてるんだな…やっぱ)


平気な振りを装っているが、知らない人間にじっと見られたり触れられたりは嫌なのだろう。

それは伸ばした前髪で何となく分かる。

本人は極力、霊を見たくないから右目を隠すと言うが、理由はそれだけではあるまいと流星は感じている。

だが、そんな思いを知っているのか、いないフリをしているのか、尚人は話を元に戻した。