月隠れの庭

      ☆

気絶した周子を2人で部屋に運んだ後、居間を借りて尚人は手当てをする事にした。


「所で流星、さっきの鬼は何?」


目の上の切れた傷口を消毒してもらいながら、尚人は尋ねる。

「縊鬼の事か…」

「随分あの鬼について詳しかったみたいだけど。それに人鬼とは違う種類の鬼がいるなんて、初めて知った」

「いや、実はオレもあの鬼の素性はさっき知ったばかりなんだ。理由はどうであれ供養されずこの世に強い悔いを残した霊が死霊となり、そして鬼へと姿を変える…そういうのを総称して縊鬼と呼ぶんだよ」

「そういえば橋の上から落とされたって…だから顔が潰れてたのか」

尚人は先ほどの流星の言葉を思い出して呟いた。

「あの鬼は自分の失った顔を取り戻す為に、長い事この世を彷徨っていたらしい。自分に合うパーツを取り戻さない限り、成仏できないからな」

「じゃあ、取り戻せないまま消されたら?」

「輪廻には戻れず、2度と転生はできない」


「それは…ちょっと気の毒かも」


ポツリと彼が口にした言葉に、


「お前なぁ、お人好しも大概にしとけよ」


流星はタメ息をついた。