月隠れの庭

(一体、流星は何を)?


傍らで見ていた尚人は、目の前で起こった出来事に、ただただポカンとするばかりだった。

流星はそんな呆然としている幼なじみの前に屈み込むと、

「お前、また随分と派手にやられたな…」

何事もなかったように、傷口を見ながら言った。


「えっ……?」


声を掛けられて、尚人はハッと我に返る。

「え、じゃねーよ。出血が酷いぞ。まぁ、病院行くにしろ、手と顔の血くらいは洗い流した方がいいだろうな」

言われ、尚人は自分の右手を改めて見た。


「うわっ…」


人生でこんなに血を流した事がないと言うくらいその手は汚れていて、普段はあまり動じない彼も流石にギョッとする。

「……」

それから急に黙り込んで、動かなくなった。


「おい、尚人。どうした?」


ケガが酷い事を言わなかった方が良かったのか、流星が焦っていると、

「そうだ…こんな呑気にしてる場合じゃないんだ」

「はっ!?」

尚人に手を振り払われる。

彼は立ち上がると、散らかっている台所を見回した。

肝心な事を忘れている自分に気づいたのだ。


「僕の傷なんてどうでもいいよ。それより流星、周子ちゃんは!?」


「周子…あぁっ!!」


流星も言われてここが、彼女の家である事を思い出し、青ざめた。