月隠れの庭

その背に向かい、

「逃がすか!観念するんだな。これまで自身の行いを、地獄で悔い改めろ!!」

容赦なく流星は呪を唱え始める。


「伏し行ふ・迦楼羅(かるら)の炎(えん)・降魔(ごうま)の剣・ その身捕らえつ・五(い)つの神・八(や)つの童子・明呪(みょうじゅ)打ち落つ」

《があぁぁぁ》


それは今までに聞いたこともないような声。

縊鬼の恐ろしい断末魔が家中に響き渡り、尚人は咄嗟に耳をふさいだ。

もがく、暴れる。

凄まじい障気の渦が巻く。


「我伏し行ふ・闇に帰せよ…渡部時武!!」


流星が唱え終わると同時、手刀(しゅとう)で鋭く空を切り払う。

すると…スッ…空間に白光の筋が走り、鬼の体を散り散りに切り裂いた。


《!》


その瞬間、視界から音もなく鬼の姿が掻き消える。

それは本当に一瞬の出来事であり、あまりにも呆気ない結末だった。

今まで辺りに満ちていた強い障気すら、微塵もない。