月隠れの庭

「はぁ…尚ちゃんって、子供の頃から妙に勘が鋭いのよね」


「そうかな?」


周子が分かり易す過ぎるのだと思うが、敢えて彼は言わない事にした。

「さすがに1人だけ食べて帰るって訳にもいかないでしょうから、容器に入れて持って帰ってよ」

「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えてそうさせて貰おうかな」

言うと、尚人は戸を閉めて上がり口に腰を下ろした。


何度かここの家にも遊びに来た記憶がある。


夕飯のいい匂いを嗅ぎながら、ぼんやり思いを馳せていると、突然、何の前触れもなく左手薬指の指輪が鈍い音と共に砕け散った。



(えっ…?)



気配は何も感じない。


しかし、明らかに指輪は反応しているのだ。


少しずつ他の指輪の表面も、黒く変色し始める。


どうしていきなりこんな現象が起こるのか、理解できずに尚人が焦っていると、家の奥から周子の悲鳴が聞こえてきた…。