月隠れの庭

       ☆

蝉の声が、耳に痛い。


尚人の住む住宅街と違い、小高い山の上にある流星の家は緑溢れる自然の中にあった。

空気もキレイだし、風も気持ちいい。


そして何より淀んだ人間の念が敷地内に足を踏み入れた途端、驚くほどグッと減り尚人は心地よさを感じていた。


長い石段を登り切った所で、

「こんなに階段長かったっけ…」

尚人は息の上がった声で呟く。

それから振り返り、景色を見た。

そこからの眺めは、石段を登ってきただけあってとても見晴らしがいい。


「子供の頃にこんな所を登ったり降りたりしてたなんて、信じられない…てか何で流星がそんなに元気なのか、僕にはそっちの方が信じられないよ…」


「何おっさんみたいな事を言ってんだよ。これよりもっと凄い存在が、ここにはいるんだぜ」


元気な流星は尚人の荷物を持ってやると、母屋の方へと歩き出す。


「えっ…何だよ、凄い存在って!!」


尚人は流星の後を追いかけながら問い返したが、彼は笑うばかりで教えてはくれなかった。