闇に緩い風が吹いた。
薄い雲が夜空に広がり、浮かぶ上弦の月を覆い隠す。
ざあぁぁぁぁぁ…。
木々は葉を揺らし、枝を震わせ…そして再び辺りは静寂に包まれた。
広い敷地の中、忘れ去られたようにひっそりと建つ古い蔵もまた闇の中にある。
戸に掛けられた鍵が解ける事は、これから先もないだろう。
時の止まった空間。
どこか物寂しい景色の中《彼》はそこにいた。
いつ来るとも分からない、約束の待ち人に会う為に…。
果てる事のない魂となって、長い間孤独の中に身を置き続ける。
今までも、そしてこれからも…。
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