月隠れの庭

「知らなかった」


「あの子自身、見えてるっていう自覚がなかったみたいだからね」


確かに普通に見えているものを、疑ったりはしないだろう。

「もっと早くあなたにそれを言ってあげれば良かったわね。16年、あなたがそんなにあの出来事を悔やんでいたとは思わなかったから…悪いのはあたしだわ」

「夏緒さん…」

「いつも尚人の心の支えになってくれてありがとう。そしてこれからも、よろしく頼むわね」

「もちろん」

流星は強く頷いた。


悔いる痛みが消える訳ではなかったが、不思議と気分はスッキリしている。


話して良かったなと思っていると、


「でもちょっと残念」


夏緒が隣でポツリと呟いた。

「何が?」

言葉の意味が分からなくて、流星は聞き返す。


「流星の苦悩顔が、もう見れないんだもの。結構好きだったんだけどな」

「……」


(夏緒さんって、もしかしてすげー《ドS》?)


密かにそんな考えが頭の中に浮かんで、彼は顔を引きつらせた…。