前方から歩いてくる制服姿の女子校生。

酷く黒い影を背中に背負っている。


「うわ…」


思わず声が出てしまった。


(凄い怨みの念…)


ぼんやりとした輪郭の影には顔があって、目だけが異様にギョロリと光っている。

よく見ると、それは背中に『背負っている』のではなく『生(は)え』ていて、少女の首筋にしがみついているのだった。

もし本人に霊の姿が見えるならば、発狂するのではなかろうかと言うほど不気味な光景だ。

すれ違った時、霊が少女の耳元でぶつぶつと怨みの言葉を吐いているのが聞こえてきて、さすがに見慣れている尚人でもゾッとする。

生前に死者をここまで追いつめてしまうような事を制服の少女はしたのだろうか…。


(あのままいけば、あの霊は間違いなく人鬼に変わるんだろうな…)


そして怨みの相手に復讐を果たす。


尚人は気の毒に思ったが第三者が勝手に手を出す事は許されないと分かっているので、そのまま振り返らず雑踏を歩き続けた。