月隠れの庭

この右目は本来あるべき元へ帰りたいと願っている。

人鬼にもそれは分かっているはずだ。

なのに、己の一部を犠牲にしてまで尚人に執着するのはなぜか。


尚人には解けない謎…。

人鬼だけが知っている答え。

いつかそれが解ける日が来ると信じたかった。


けれど…。


その思いは崩れそうになっている。


(悔しい…)


目を取り返す事の出来なかった自分が。


(悔しい)


目の前に現れた鬼を掴む事すら出来なかった自分が。

死して尚、この世に残された人の念に、生きている自分が適わない事が悔しい…。


それが傲慢な思いである事は、十分分かっているけれど…。


本当に取り戻したいという《覚悟》も《思い》もないのではないかと言われたようで…。


自分の情けなさを思い知らされた尚人の左目から、静かに涙がこぼれ落ちた。