人混みの中を歩くのは疲れる…。

雑音、喧騒、そして汚れた空気。


何より普通の人には見えないものが、津久見尚人には見える。


この世の住人ではない存在が街のあちこちに溢れている、その姿が。

大抵は大人しく人混みを行き来していたり、道路や歩道に座り込んでいるだけで害を為す事はない。

人の集まる所にいると寂しさを紛らわせる事ができるからか、生前の記憶の余韻に浸っているのか…。

とにかく、賑やかな場所ほど不思議とそういうものたちが集う所となる。


尚人はふと足を止めた。