月隠れの庭

《玩具は外さぬ、目は返せ…何とも欲深な事よ》


すっと手が奥へと消えるのを見て、


「待て。どうしてお前は今になって、僕の前に現れたんだ!?」


尚人は慌てて問いかけた。

2度とこんな機会はないと感じて。


《………》


鬼は暫くの間、黙していたが更に低い声音でこう呟いた。


《それが私とあの者との約束だからな…》


(あの者…誰の事を言ってるんだ?)


尚人は首を傾げる。


《全てを知りたければ、早くここまで捕まえにおいで…》


「待てよ!!」

尚人は叫んだが、それきり声は聞こえなくなった。


(全てを知りたければって、何なんだよ)


人鬼の気配の消えた闇を見つめて、尚人は立ち尽くす。

目をすり替えたのは、単なる悪戯ではないと言う事なのだろうか。


(あの蔵にはただ人鬼が閉じ込められていただけではない、何か秘密がある…?)


意味深な人鬼の言葉が、彼の心を強く支配した。