月隠れの庭

      ☆

夏緒の忠告は、流星には無用のものだった。

尚人が玄関を開けると同時に姿を見せた彼女は、驚くほど若く『おばさん』と呼ぶのを躊躇わせるものだったからだ。



「お帰り、流星!!」



満面の笑みで駆け寄ってきた夏緒は、流星を両手でギュッと抱きしめる。


「あ…た、ただいま…」


お帰りと言われ、流星の胸にじんとくるものが込み上げてきた。


「大きくなったわね。随分と男前になったじゃない」


流星に回していた手を解くと、ふわふわの栗色の髪を揺らしてニコリ微笑んだ。

色白で色素の薄い瞳の夏緒は、人形のようだ。


「外は暑かったでしょ。さ、中に入って」


流星の手から荷物を取ると、それを持ってリビングへと歩いていく。