月隠れの庭

「……………………」


バタン。


視線の先にあるものをしばし見つめた後、一旦部屋に戻りドアを閉める。


(まだ疲れが残ってるのかな…)


そんなはずはないと気を取り直して、再びドアを開けた。


ひらひらひら…。


床から突き出た1本の白い手が、確かにこちらに向かって手を振っている。

どうみても昔から見慣れた、この家の地縛霊だ。


「な…何で???」


もう人鬼の目がなくなって、見えるはずがないのに…。

動揺を隠せない。

尚人は先程の流星のメモと、ふと以前彼に言われた《ある言葉》を思い出した。


(そう言えば、僕は元々霊感があるって…前に流星が言ってたような…)


気がする…何となく。


「はは………そうなんだ…あれって冗談かと思ってたよ」

尚人は顔をひきつらせる。


(つまり自分の目に戻っても、今までと何ら生活は変わらないって事!?)


「嘘だろ…」

あまりのショックに、彼はへなへなと力なく床に座り込んだ。


階下から夏緒が珈琲が入ったと呼んでいるが、返事をする元気もない。


ベッドの上の指輪が、小さくキラリと光を放った。

         ― 完 ―
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