尚人が目を覚ますと、そこは流星の家だった。


「おっ、目覚ましたか」


自分を上から覗き込んでいる幼なじみが、ホッとした表情を浮かべて笑う。

「流星…痛たた…」


顔の右半分が腫れていて、上手く目が開かない。


その様子を見て、流星は苦笑した。

「しばらく顔の腫れは引かないだろうな。障気もかなり受けて体力も消耗してる、しばらくここでゆっくりしていけばいい」

「うん…そうだね。さすがにこんな顔で外を歩く勇気はないよ」

鏡を見ずとも、自分がどんな姿なのか大体想像はつく。

「オレもこのままお前を家に帰して夏緒さんに怒られるの、嫌だからな。可愛い息子の顔を2度もこんな風にしてって、絶対言われる」

「母さんはそんな事、間違っても言わないよ。流星が無事で良かったとは言ってもね」

ぎこちなく笑うと、尚人は布団から体を起こした。


「流星が僕をここまで運んでくれたの?」


「あぁ。すげー重かったから、全身筋肉痛だよ」


「ご、ごめん…」


「嘘、嘘。あれくらいで筋肉痛になるわけないだろ、お前軽くて反対にビックリしたくらいだ」


尚人の反応が可笑しくて、流星は笑った。

「でも蔵から結構距離があるから、重かったと思うんだけど」

「体力だけは自信があるから、気にするなって」


「……ありがとう」


素直に礼を言った後、尚人は「あっ」と短い声を上げる。
.