月隠れの庭

尚人が改めて指輪を眺めていると、


「所でこれから、どうする?」


タバコに火をつけた流星に聞かれる。

「とりあえず荷物もある事だし、僕の家に行こう。母さんも会うのを楽しみにしてるからね」

「そうだな。これからしばらく世話になるんだし、挨拶はきちんとしとかないとな。それにしてもおばさんに会うの久しぶりだから、ちょっと緊張するぜ…何たって16年ぶりなんだ」

子供に戻ったように、彼は無邪気な笑顔を見せる。

流星は物心つく前に事故で母親を亡くしているので、近所に住んでいた尚人の母・夏緒(なつお)がよく可愛がってくれたのだった。

「そうだ、流星に母さんからの伝言預かってたんだ」


「伝言?」


何だろうと続きを待っている彼に、

「私の事は《夏緒さん》と呼ぶ事。《おばさん》なんて言ったら、承知しないから…だってさ」

尚人は夏緒そっくりな顔で、ニコリと笑って伝えたのだった。